離婚に悩む男性の方へ
はじめに
✓ 男性は、離婚したら当然に高額な慰謝料を支払わなければいけないのか?
✓ 別居中の妻が、多額の生活費や子どもの塾代の支払いを求めてきた。いくら支払うべきか?
✓ 妻が離婚後も持ち家に住み続けたいと言っている。妻が住む家の住宅ローンを自分が支払うのか?
✓ 妻とは離婚したいが、子供と会うことは諦めなければいけないのか?
✓ 親権争いは女性に有利だと聞くが、男性は親権を諦めるしかないのか?
男性が離婚問題に直面したとき、このような疑問や不安を抱かれるのではないでしょうか。
世間一般において、男性は離婚問題において「不利」であると言われています。
しかし、なぜ男性が離婚問題において「不利」であると言われるのか、その理由を理解して対策を講じ、状況を冷静に分析してしかるべき対応がとれれば、男性が納得できる離婚問題の解決を得られます。
そこで、このページでは、男性が離婚問題において「不利」であるといわれる理由と、男性の離婚に際して知っておくべき基本知識についてご説明します。
離婚問題に悩む男性の皆様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
目次
なぜ男性が離婚問題において「不利」といわれるのか
一般に、男性は離婚に際して、多額の金銭を支払ううえ愛する子どもとの関係も絶たれてしまうというイメージがあり、男性は離婚問題において非常に「不利」であると考えられています。
そのような考えが一般化した原因として、次のような事情があります。
✓ 離婚時には男性が金銭を「支払う側」になることが多い
✓ 親権が母親に認められやすい
✓ 子どもとの面会交流の主導権を母親が持つことが多い
その理由は以下のとおりです。
✓ 離婚時には男性が金銭を「支払う側」になることが多い理由
結婚あるいは出産を機に仕事を辞める女性や仕事をセーブする女性が多く、男性の方が高収入であることが一般的です。また、住宅や預貯金も男性名義であることが多いので、婚姻費用や養育費、財産分与等の金銭面で男性が「支払う側」になる傾向があります。
✓ 親権が母親に認められやすい理由
裁判所が子の親権者を決めるにあたっては、以下の事項が重視されます。
a) 同居中、主に子どもの面倒を見ていたのはどちらだったか(主たる監護者はどちらか)
b) 母性的な役割を果たしていたのはどちらか(特に子どもが乳幼児の場合)
c) 監護状況をできるだけ変更せず維持できるか
d) 兄弟を分離せずに監護できるか
これらの事項について、夫が生計を立てるために主として働き、妻が日常的に子の世話をする家庭が多く、その結果として、母親が主たる監護者であったと認められて親権者になるという傾向があり、「親権は母親に行くもの」というイメージが強くなっています。
✓ 子どもとの面会交流の主導権を母親が持つことが多い理由
面会交流については、同居親が面会交流の実施や条件について主導権を持つ傾向にあります。そして、母親が親権者となるケースが多いため、結果として面会交流の主導権を母親が持つことが多くなります。
また、家庭裁判所の手続きで面会交流の条件を決めたとしても、決められた内容での実施を確保することが現実的には難しいということもあります。
離婚問題において「男性ができること」
一般に「不利」といわれる男性の離婚問題においても、納得できる離婚問題の解決のために「できること」があります。
✓ 相手の金銭的要求が過分であれば、むやみに応じるのではなく、きちんとした根拠を持って拒否する
✓ 妻に不倫やDV等有責な行為があれば、男性側も慰謝料請求をし、事案によっては婚姻費用の減額などを求める
✓ 面会交流では、夫婦の対立的な感情に流されることなく、大切なお子さんとのつながりを守り、「お子さんの幸せのために」面会交流の実績を冷静に積み重ね、離婚後もお子さんとの良好なつながりを維持するために努める
✓ これまでの育児の状況やお子さんとの関係を冷静に分析し、状況によってはご自身が親権を主張して、「お子さんの幸せに資する」離婚条件の実現を目指す
男性の離婚に際して知っておくべき基本知識1~離婚原因
離婚問題に直面した男性に向けて、知っておくべき基本知識として「離婚原因」「離婚事由」の解説をいたします。
1 裁判で離婚を求めるには、民法770条1項の「法定離婚事由」が必要
双方が合意の上で離婚する協議離婚や調停離婚であれば、双方の合意がある以上、離婚の理由は問われません。しかし、裁判で離婚を求める場合には、離婚が「法律上認められるかどうか」が問題になります。
民法770条1項は、離婚が認められるための5つの事由(法定離婚事由)を定めています。
① 配偶者に不貞行為があったとき(いわゆる不倫)。
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
裁判で離婚するためには、民法770条1項が規定する法定離婚事由の存在が必要です。不貞やDVなどが典型的な離婚事由です。「性格が合わない」といった理由で離婚したい場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるかが問題になり、別居期間の長さなどを考慮して「婚姻関係が修復不可能な程度に破綻しているといえるか」が問われます。
したがって、妻から離婚を求められている場合でも、上記のような典型的な離婚事由がない限り、裁判で離婚することは簡単ではなく、ある程度の時間を要するものですから、直ちに離婚が成立するわけではありません。
典型的な離婚事由があるかどうかは、離婚裁判のみならず、離婚協議や離婚調停の段階においても、非常に重要なポイントとなります。交渉の場面において、「裁判で離婚できるかどうか」は、相手の提示する条件を呑むか、自分の要求を通すかといった判断に影響するからです。
もっとも、明確な離婚原因がなくとも、別居期間が長くなると、離婚事由が補完される場合があります。一般的には、別居から少なくとも3年程度は経過しないと離婚が認められないでしょう。
また、あなたにまったく心当たりがないにも関わらず、妻から一方的に離婚を迫られている場合には、実は妻が不倫している、という可能性もあります。状況にもよりますが、調査会社に依頼をして不倫の有無を確認することも検討すべきでしょう。不倫の証拠があれば、離婚問題において有利な立場を得ることができます。
2 有責配偶者からの離婚請求は原則認められない
民法770条1項の法定離婚事由のほかに、裁判で離婚が認められるかどうかを大きく左右するポイントが、離婚を求める側が「有責配偶者」にあたるかどうかです。
有責配偶者とは、離婚の原因となる行為をした配偶者のことであり、不貞行為(不倫)やDVなどをした配偶者のことです。
判例は、有責配偶者からの離婚請求は信義則に反して許されないという原則を示したうえで、①年齢や婚姻期間との対比で別居期間が相当の長期間であり、②未成熟子がいない夫婦で、③離婚によって相手方配偶者が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況におかれるなど、離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するとはいえないような特段の事情がある場合には、例外的に離婚が認められるとしています。
したがって、妻から離婚を求められている場合であっても、妻が有責配偶者であれば簡単には離婚が認められない一方で、あなたが有責配偶者であり離婚を望む場合には、かなり厳しい立場に立つことを理解しておかなければいけません。
男性の離婚に際して知っておくべき基本知識2~離婚条件
1 金銭に関する「離婚条件」
婚姻費用
婚姻費用は、端的にいうと配偶者に支払う生活費のことです。たとえ別居中であっても、婚姻を解消するまでは収入に応じて相互に婚姻費用を分担する義務を負うことが原則です。多くの家庭で夫の方が収入が多いため、婚姻費用を支払う側になります。
婚姻費用は、双方の収入と子の人数・年齢を基にした裁判所の算定表をベースに様々な事情を加味して算定されますから、不当に高額な請求に対しては減額を求めます。また、不貞行為など妻の有責な行為によって別居に至った場合には、妻の生活費相当分の支払義務が否定されて、子の養育費相当分の支払義務だけが残り、大幅な減額になるというケースもあります。
裁判所の算定表はこちら
養育費
養育費も婚姻費用同様、裁判所の算定表をベースに算定されますから、不当に高額な請求に対しては減額を求めます。
私学の学費や塾代については、当然に父親が支払義務を負うというものではなく、①養育費を支払う側が私学や塾に通うことを承諾したかどうか、②承諾していなかった場合には、支払う側の社会的地位や学歴、収入等から、私学や塾に通うことが不合理ではないかどうかを基準に、費用負担の有無を判断します。また、仮に費用負担すべきと判断された場合でも、必ずしもに全額負担するという意味ではありません。
裁判所の算定表はこちら
財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を離婚時に清算する制度で、原則として2分の1ずつに分けます。預貯金や不動産などの財産は夫名義のことが多いため、男性が「支払う側」になる傾向があります。
財産分与の割合は原則として2分の1ですが、個人の特殊な技能や過酷な環境に身を置くことで高収入を得ていたケースや、婚姻前から有する特有財産を支出して財産を形成したケース等、特別な事情があれば2分の1の割合が修正される可能性があります。
夫名義の住宅ローンが残っている自宅に、離婚後、妻が住み続けることを希望したとしても、妻側の希望を一方的に受け入れる必要はありません。妻が自宅に住み続ける場合には、①住宅ローンを妻名義に借り換えする、②住宅ローンを夫名義のままにする場合には、妻が夫に家賃を支払う等の方法が考えられます。住宅ローンが残った自宅の清算は、自宅を売却して債務等を差し引き、残額を2分の1ずつ分けるケースが多いです。
慰謝料
離婚に際して慰謝料が問題になるのは、夫婦のどちらかが「有責配偶者」である場合です。
有責配偶者とは、離婚に至る主な原因を作り出した配偶者をいい、不貞行為をした配偶者が典型的な例です。
したがって、男性が離婚を希望したとしても、直ちに慰謝料の支払義務を負うわけではなく、相手が不貞行為をしたような場合には、むしろ男性が請求する立場になります。
2 子どもに関する離婚条件
親権
親権とは、未成年の子を監護養育し、その財産を管理する権利及び義務をいいます。すでに述べた通り、母親が親権を取得するケースが多いというのが現状です。
しかし、すべての事例で母親に親権が認められるというわけではなく、母親の虐待等により父親の方が監護養育に適していると認められた場合や父親の監護実績が認められた場合には、父親が親権を取得することも可能です。
親権を争う場合に裁判所が考慮する事項を踏まえ、お子さんの幸せのために、ご自身が親権を主張するか、親権を求める場合には、どのようにアプローチすべきかの道筋を立てます。
面会交流
面会交流とは、離婚や別居などにより離れて暮らすことになった親と子が、面会等を通じて交流を持つことをいいます。親と子の交流が子の健全な成長に資するという考えに基づき実施されます。
面会交流は、同居する親が事実上主導権を持つことになり、約束通りの実施を確保することが難しい側面がありますが、子の福祉を第一に考える姿勢を示しながら、面会交流の実績を積み重ねることが重要です。
弁護士としては、相手に面会交流の不当な拒絶をさせないよう留意しつつ、相手が不当に拒絶する場合には、裁判所での手続きを見据えた対応を取ります。
弁護士からのメッセージ
これまで、多くの離婚問題に携わり、男性の離婚問題についても経験を重ねてまいりました。
ときには、特にお子さんを巡る離婚問題において、男性の方が難しい立場にあると感じることもあります。しかし、不当な現実に対しては「不当である」と主張をすべきです。
解決事例として、依頼者様の冷静で粘り強い姿勢と弁護士の適切なアプローチにより、父親である依頼者様が親権を取得したケースもあります。
一方で、むやみに対立して戦うだけではなく、相手の要求の妥当性を判断し、依頼者様の置かれた状況を冷静にとらえて適切な手段を講じながら、「大切なお子様の幸せを最優先にした」離婚問題の解決を図るという側面も忘れてはいけません。
男性の離婚問題において大切なのは、冷静さと粘り強い姿勢です。
弁護士として、辛い状況の中にいる依頼者様を専門知識と経験をもってサポートし、依頼者様にとっての「納得できる離婚問題の解決」へと共に導いていきたいと考えています。
是非一度お問合せください。
この記事を担当した弁護士
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みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋
神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
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