不倫慰謝料の請求を受けた方

はじめに

不倫慰謝料を請求する内容証明郵便や弁護士からの通知が届いたら、驚いて気が動転し相手の言いなりになってしまったり、感情的になって相手に攻撃的な態度を取りたくなってしまうかもしれません。

しかし、相手の請求をよく確認せず慌てて応じることや、逆に相手の感情を逆なでして紛争を大きくするような対応をしてはいけません。

まずは落ち着いて、自分がしたことが「不貞行為」にあたるのか、相手はどのような要求をしているのか、それに対してご自身は応じる必要があるのかを冷静に確認し、慰謝料請求への対応方針を立てましょう。

ここでは、不倫慰謝料を請求する通知が届いた方へ向けて、確認すべき事項や対応の流れ、必要な基本知識についてご説明します。

目次

はじめに確認すべき事項

不倫慰謝料を請求されたら、誰でもかなり動揺してしまうものです。
しかし、慌てて対応すると後から修正が困難になってしまうケースが多いので、まずは状況を確認しましょう。

小目次
(1)どのような通知が届きましたか?
(2)証拠について
(3)要求の内容
(4)相手方夫婦の状況

(1)どのような通知が届きましたか?

不倫慰謝料を請求する通知は、誰から、どのような形態で届きましたか?
以下の3つが典型的な例です。

不倫相手の配偶者から直接電話・メール・SNSメッセージが来た 電話・メール・SNS等で連絡が来た場合、相手があなたの氏名や住所・勤務先を知っているかどうか不明です。不倫についてどのくらい確信を持っているのか、有力な証拠を持っているかなどもわかりません。
相手の言い分をよく聞きつつ、発言は慎重にしましょう。
内容証明郵便が届いた 内容証明郵便とは、いつ、誰から誰宛に、どのような内容の郵便が差し出されたかを証明できる郵便のことです。
内容証明郵便で不倫慰謝料請求された場合、不倫慰謝料請求権について消滅時効の完成を6か月猶予する効果があるので、相手は弁護士への依頼や裁判も視野に入れている可能性があります。
弁護士からの受任通知が来た 相手はすでに弁護士に不倫慰謝料請求について依頼しています。
交渉段階で慰謝料の支払いや金額等の条件に折り合いがつかなければ、裁判を起こすことも考えているでしょう。

(2) 証拠について

相手は、あなたに対して不倫の証拠を示しましたか?また、相手が証拠を得るような心当たりはありますか?

裁判で不倫慰謝料請求が認められるためには、証拠が必要です。相手がどんな証拠を示してきたか、また、どんな証拠を持っていそうかを整理しましょう。

ただし、相手がすべての証拠を初期段階で開示してくるとは限りません。調査会社(探偵・興信所)の報告書など、後から思わぬ証拠を示されることもあります。不倫について心当たりがある方は、相手が証拠を持っていないと決めつけて不誠実な態度をとると、相手を余計に怒らせて状況が悪化してしまいます。

→ 不倫慰謝料請求における証拠についてはこちらもご覧ください

(3)要求の内容

相手はあなたに、どのような要求をしてきていますか?

✓ 慰謝料の金額
✓ 支払期限や返答期限
✓ 謝罪や不倫相手との接触禁止等

相手が示す支払期限が切迫している場合でも焦らずに状況を確認し、早めにご相談ください。
請求に対し無視を決め込むと、相手の感情が激化し紛争が複雑化するほか、交渉の余地がないと判断されて相手が裁判準備に入る可能性もあるため、無反応のまま放置することは避けましょう

(4)相手方夫婦の状況

相手からの通知には、夫婦関係について何か記載がありましたか?

不倫が原因ですでに離婚してしまった場合や離婚寸前、離婚調停や離婚裁判をしている場合には、裁判でも慰謝料の金額が高くなってしまう傾向にあります。別居には至っておらず、「離婚を考えている」等と記載されているだけの場合には、本当に離婚するかどうかは読み取れません。

不倫により相手夫婦の婚姻関係が「破綻」したかどうかは、慰謝料の金額に大きな影響を与えるので、通知の内容をよく確認しましょう

慰謝料の支払義務が生じる「不貞行為」とは?

まず、あなたは慰謝料の支払義務を負うような行為をしてしまったのか、前提から確認しましょう。

小目次
(1)定義
(2)不倫慰謝料請求の要件

(1)定義

法律上、慰謝料を支払うべき義務が生じるのは、基本的に不貞行為をした場合です。
不貞行為(不倫)とは、配偶者のある者が自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を持つことをいい、民法770条1項に定める離婚事由にあたります。

不貞行為をした配偶者は慰謝料の支払義務を負いますし、相手が既婚者であることを知りながら(あるいは過失により知らずに)性的関係を持った不倫相手も、不倫相手の配偶者に対し慰謝料の支払義務を負います。

 (2)不倫慰謝料請求の要件

✓ 相手が既婚者であることを知りながら(あるいは過失により知らずに)
✓ 自由な意思に基づいて
✓ 既婚者と性的関係を持った場合
これにより、夫婦の平穏な共同生活を害したことに対して慰謝料を支払うべき義務を負います。

不倫慰謝料を支払わなくてもよい場合とは?

不倫慰謝料請求を受けた場合にも、慰謝料を支払わなくてよい場合や慰謝料の額が大幅に減額されることがあります。ここでは代表的な例についてご説明します。

小目次
(1)性的関係がない
(2)既婚者だと知らず、過失もなかった
(3)不倫の前から婚姻関係が破綻していた
(4)消滅時効の完成
(5)不倫相手がすでに慰謝料を支払った場合

(1)性的関係がない

性的関係がない場合には不貞行為にあたらないため、通常は慰謝料の支払義務を負いません
ただし、性的関係がない場合でも、恋愛感情を示す手紙やメッセージのやり取り、過度な頻度での会合や高価なプレゼントの交換など、社会的に妥当な範囲を逸脱している場合には慰謝料請求が認められるとする裁判例もあります。この場合の慰謝料の額は、10万円から30万円ほどが多い印象です。

(2)既婚者だと知らず、過失もなかった

交際相手が既婚者であることを知らず、かつ、知らなかったことについて過失がない場合には、慰謝料の支払義務はありません。

ここでいう「知らなかったことについて過失がある」とは、通常の注意を払えば相手が既婚者だと気づけたのに、不注意で知らなかったことをいいます。相手が既婚者であると疑うような事情があったにも関わらず、漫然として確認せずに性的な関係を持った場合には、知らなかったことについて「過失がある」と判断されてしまいます。

(3)不倫の前から婚姻関係が破綻していた

不倫慰謝料の請求が認められるのは、不貞行為によって相手方夫婦の平穏な共同生活が害されるからだと解釈されています。したがって、不倫(不貞行為)前から婚姻関係が破綻していた場合には、慰謝料の支払義務は生じません

「婚姻関係が破綻していた」とは、単に夫婦仲が悪いということではなく、夫婦関係が修復不可能なほどに悪化していて、離婚したのと同一視できるような状態をいいます。既婚者である不倫相手が夫婦関係について悪口や愚痴を言っていたからといって、それだけで「婚姻関係が破綻していた」とは認められません。

(4)消滅時効の完成

不倫慰謝料請求権は、損害(不倫)および加害者(不倫相手の氏名・住所)を知った時から3年間、不倫があったときから20年間権利行使しないときは、時効により消滅します。

※令和2年3月31日以前に不法行為から20年以上経過した場合には、民法改正前の「除斥期間」の規定が適用されます。この場合、時効の主張をするかどうかを問わず、裁判では慰謝料請求が認められなくなります。

消滅時効が完成したことは、交渉段階で支払いを拒む理由になりますし、裁判においては、相手の主張を退ける理由として反論のかたちで主張します。

ただし、内容証明郵便等による請求(催告)、裁判(訴訟)の提起、不倫慰謝料について当事者間で協議する旨の合意を書面でした場合、あるいは、不倫慰謝料について支払義務を認めたり慰謝料を一部支払った場合(債務の承認といいます)などには、消滅時効の完成が猶予されたり、時効が更新されて新たに一から進行が始まります。

消滅時効が完成したかどうか不明な場合は、弁護士にご相談ください。

(5)不倫相手がすでに慰謝料を支払った場合

不倫慰謝料の支払義務は、不倫をした二人の不真正連帯債務にあたり、二人とも不倫相手の配偶者に対して慰謝料全額を支払う義務を負います。しかし、不倫した一方がすでに十分な金額の支払いをしたにも関わらず、さらにあなたに慰謝料の支払を求めてきた場合には、十分な額の慰謝料の支払があったことを理由に、支払いを拒むことができます。

ただし、「十分な支払い」がされたかどうかについて意見が分かれる場合には、最終的に裁判で争うことになります。

不倫慰謝料の相場と算定において考慮される事情

不倫慰謝料を請求されたら、相手の要求する金額が妥当かどうかを判断する必要があります。
ここでは、不倫慰謝料の相場と、裁判で慰謝料の額を決める際に考慮される事情についてご説明します。

小目次
(1)裁判で不倫慰謝料を請求する場合の相場
(2)金額の算定にあたって考慮される事情とは

(1)裁判で不倫慰謝料を請求する場合の相場

離婚や別居に至った場合 100万円~300万円
ただし、多くの事例が200万円前後です。
離婚や別居しない場合 30万円~150万円
ただし、100万円を下回るケースが多いです。

(2)金額の算定にあたって考慮される事情とは

裁判で不倫慰謝料の金額が決まる場合には、一般的に以下の事情が考慮されます。

婚姻期間の長さ 不倫をした時点で相手夫婦の婚姻期間が長い場合、金額が高くなる傾向にあります。
不倫していた期間の長さ・回数・頻度・態様 長期間にわたる不倫や頻繁な不貞行為、不倫関係の解消を約束しながらも嘘をつき関係を維持していた場合や同棲していた場合など、態様が悪質だと判断されると増額される傾向にあります。不倫によって妊娠や子どもが生まれた場合も増額要因となります。
夫婦関係への影響の度合い 円満だった夫婦関係が不貞行為のせいで破綻し、別居や離婚に至った場合は金額が高くなる傾向があります。反対に、不倫以前から夫婦仲が悪かった場合や別居や離婚に至っていない場合は金額が低くなる傾向があります。
子どもの有無・年齢 相手夫婦に小さな子どもがいる場合、不貞行為により夫婦関係が破綻・悪化すると金額が高くなる傾向にあります。
不倫相手の認識の程度や悪意 不倫相手が既婚者であることを知っていたか、過失により知らなかったのか、または積極的に離婚を促す意図があったかなども考慮されます。
不倫された配偶者(請求する人)の精神的苦痛の程度 相手が不倫によりうつ病になってしまった場合や、闘病中や妊娠中の不倫だった場合等は、精神的苦痛の程度が大きいと評価され、増額される傾向にあります。
その他 不倫相手の配偶者に対し謝罪や反省の態度を示している場合や、社会的制裁を受けている場合、また慰謝料請求する側に過去の不倫等の落ち度がある場合などは、減額の要因となります。

慰謝料請求への対応の流れ

不倫慰謝料請求の通知を受けた方が、弁護士に依頼せずにご自身で対応する場合でも、交渉・裁判・支払いという大まかな流れは同じです。ここでは、慰謝料請求への対応の流れを簡単にご説明します。

小目次
(1)請求への応答・交渉の開始
(2)裁判(訴訟)
(3)分割払いにしたい場合の注意点

(1)請求への応答・交渉の開始

まずは、郵便等で相手に対し、不倫慰謝料請求に対するご自身の立場を示す返事を送り、交渉を始めます。

慰謝料の支払義務を認めるものの、相手の請求金額が高すぎる場合や、分割払いなどの条件面で希望がある場合には、話し合いを試みましょう。

一方、そもそも不貞行為がなかったと主張する場合や、婚姻関係がすでに破綻していたと主張する場合には、相手が納得しないことが多いため、裁判になる可能性もあります。

(2)裁判(訴訟)

慰謝料の支払義務や金額について争いがあり、示談の見込みがない場合、請求する側が裁判を提起します。

裁判になると、最終的には判決によって慰謝料の支払義務と金額が示されます。裁判中にも双方の合意によって和解が成立することがあります。裁判官が「和解勧告」という和解の試みを行うことがあります。和解は判決と異なり、当事者双方が合意した内容の調書が作成されるので、双方の互譲による柔軟な解決が可能になります。

(3)分割払いにしたい場合の注意点

慰謝料の支払義務を認めつつ分割払いを希望する場合、判決では分割払いが認められないため注意が必要です※。裁判中でも和解によって分割払いが認められることはありますが、これには相手との合意が必要です。

経済的な事情で一括払いが難しく、分割払いを希望する方は、交渉で相手に譲歩を引き出す必要があります

※ 通常の裁判で分割払いの判決が出ることはありませんが、簡易裁判所の少額訴訟という手続き(60万円以下の金銭請求の事案で選択できる手続き)では、分割払いの定めがある判決が出ることがあります。

弁護士に依頼した場合の対応の流れについて

ご自身で不倫慰謝料請求への対応をするのが難しいと感じる方は、弁護士にご相談ください。

ここでは、弁護士への依頼後、不倫慰謝料請求にどのような流れで対応するかについてご説明します。

→ こちらをご覧ください

不倫慰謝料請求をされた方が弁護士に依頼するメリット

不倫について家族や職場に知られたくない、慰謝料の額が高額にならないか心配である等、不安を抱いている方がほとんどかと思います。
ここでは、不倫慰謝料請求をされた方が弁護士に依頼するメリットについてご説明します。

 → こちらをご覧ください

状況別の対応方法

不倫慰謝料請求を受けてお困りの方の中でも、そもそも不貞行為がなかった方、不倫の期間が非常に短かった方等、さまざまなご事情があるかと思います。
ここでは、状況別の対応方法についてご説明します。
→ こちらをご覧ください

 

慰謝料請求をされた場合の料金のご案内

着手金  交渉段階 220,000円(税込)

     訴訟段階 330,000円(税込)

報酬   22万円または減額分の22%(最低報酬22万円)

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