財産分与の詳しい解説

はじめに

離婚に際して話し合われるべき重要な事項のひとつが「財産分与」です。

これは、夫婦が共に築いてきた生活の成果を、法的・公平に清算するための制度です。どちらがどれだけ稼いだかという表面的な話ではなく、それぞれの役割や貢献をふまえて、離婚後の新たな生活を支える視点から考える必要があります。

本記事では、財産分与とは何かその割合・請求期限などについて、横浜の離婚弁護士が令和6年法改正を踏まえて、わかりやすく解説いたします。

目次

離婚に伴う財産分与とは?

離婚に伴う財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して形成・維持してきた財産を、離婚に際して分け合う制度です。離婚に伴い、夫婦の一方が他方に対して請求することができます。

財産分与は離婚時に必ず行わなければいけないというものではありません。夫婦のどちらも互いに財産分与の請求をせずに離婚することができますし、離婚が成立してから財産分与の請求をすることもできます。

財産分与は、いつまで請求できますか?

財産分与は離婚から2年以内に行わなければいけません。

少し難しい話ですが、これは「消滅時効」ではなく「除斥期間」というものです。除斥期間には「時効完成の猶予」といった制度がなく、「離婚成立のときから」2年が経過すると、家庭裁判所の調停や審判でも請求することができなくなってしまいます。
この「財産分与の除斥期間」については、令和6年に「2年以内」を「5年以内」に変更する法改正がなされました。まだ令和6年改正法は施行されていませんが(令和8年5月24日までに施行予定)、改正法が施行されると、財産分与の時間的な制限は5年になります。

財産分与の種類

財産分与には、①清算的財産分与②扶養的財産分与③慰謝料的財産分与の3種類があると考えられています。

① 清算的財産分与 
夫婦が婚姻期間中に形成・維持した財産を離婚時に清算するという最もスタンダードな財産分与です。通常、「財産分与」というとこの清算的財産分与のことをいい、家庭裁判所の手続きにおいても、基本的にはこの清算的財産分与が前提になっています。

② 扶養的財産分与
夫婦の一方が離婚によって経済的に困窮する恐れがある場合に、財産分与に扶養的な意味合いを持たせて金額を調整する場合があります。このような扶養の目的をもって行われる財産分与を扶養的財産分与といいます。典型的なケースとしては、清算的財産分与の額が少なく、かつ高齢や病気・障害などの事情により就労が困難な配偶者が挙げられます。

③慰謝料的財産分与
夫婦の一方に不貞行為(不倫)やDVなど有責性がある場合に、財産分与に慰謝料としての意味合いを含ませて金額を調整することがあり、このような財産分与を慰謝料的財産分与といいます。もっとも、本来は「離婚慰謝料」と「財産分与」は全く別のものであり、通常、離婚条件を決める際には、慰謝料はいくらか、財産分与はいくらか、とそれぞれ別に考えます。
このように、財産分与の金額を決める際に、夫婦双方の事情を考慮して、扶養的な目的の金額や慰謝料分を財産分与の額に「上乗せする」ケースもありますが、一般的に財産分与といえば①の清算的財産分与のことを指します。

財産分与の対象となる財産

1 対象となる財産(夫婦の共有財産)
財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦が形成・維持した財産であり、名義がどちらのものであっても対象となります。
具体的には、家やマンションなどの不動産現金や預貯金退職金株式などの有価証券生命保険(解約返戻金があるもの)、自家用車などの財産が対象になります。また、住宅ローンや借金などのマイナスの財産も対象になります。

2 対象とならない財産(特有財産)
①夫婦の一方が婚姻前から有していた財産や②婚姻中に取得したとしても夫婦の協力によらずに取得した財産(相続など)は、特有財産といって、財産分与の対象にはなりません。ただし、特有財産であっても、婚姻後に夫婦の協力のもとで財産的価値が増幅したり協力によって価値が維持できた場合には、相手の貢献度に応じて財産分与の対象になり得ます。

財産分与の割合と2分の1ルールの修正

財産分与の割合は、財産の名義や共働きか専業主婦か等を問わず、原則として2分の1ずつです。
ただし、夫婦の一方が特別な能力や技能、過酷な労働などによって高収入を得て財産を形成した場合など、2分の1ルールが修正されることがあります。

【裁判例①】東京地裁平成15年9月26日判決

夫が妻との同居開始時にはすでに成功した経営者となっており、夫婦の共有財産の原資が夫の特有財産であったという事例で、①共有財産の原資のほとんどが夫の特有財産であったこと、②その運用・管理に携わったのも夫であったこと、③妻が具体的に共有財産の取得に寄与したり、会社の経営に直接的・具体的に寄与したり、特有財産の維持に協力したという証拠がないこと、④他方で、婚姻関係が破綻したのは主として夫の責任であり、⑤妻の経歴から職業に携わることが期待できないことから、財産分与に今後の扶養的な要素を加味すべきであることを考慮して、「財産分与額は、共有物財産の価格合計約220億円の5%である10億円を相当」としました。

【裁判例②】大阪高裁平成26年3月13日判決。判例タイムズ1411号177

財産形成に対する「夫婦の寄与割合は各2分の1と解するのが相当」であるとしつつ、「高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届け出前の本人の個人的な努力によって形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合には、そうした事情を考慮して寄与割合を加算することも許容しなければ、財産分与額の算定に際して個人の尊厳が確保されたことになるとはいいがたい」として、医師である夫の寄与分を6割、夫の診療所で経理等を一部担当していた妻の寄与分を4割としたものがあります。

また、令和6年の法改正により家庭裁判所が財産分与について判断する際には、次の事項を考慮して、分与させるべきかどうかならびに分与の額及び方法を定めるという基準が明示されました。

①財産の額
②その取得又は維持についての各当事者の寄与の程度
③婚姻の期間
④婚姻中の生活水準
⑤婚姻中の協力及び扶助の状況
⑥各当事者の年齢
⑦心身の状況
⑧職業及び収入
⑨その他の一切の事情

財産分与の請求方法

財産分与は、次のとおり、離婚時に請求するか、離婚から2年以内(令和6年改正法施行後は5年以内)に請求する方法があります。

1 離婚時に請求する場合

✔️ 離婚協議で請求する
✔️   離婚調停で請求する
✔️ 離婚裁判で請求する

離婚の手続きは、①離婚協議、②離婚調停、③離婚裁判と進んでいきますが、どの段階においても財産分与を請求できます。協議離婚が成立し、財産分与の条件も決まった場合には、合意内容を離婚協議書や離婚公正証書を作成して明記しておきましょう。

離婚準備・離婚手続きの詳しい説明はこちら

2 離婚後に請求する場合
離婚後に請求する場合には、①家庭裁判所の手続を使わず直接請求する方法と、②家庭裁判所に調停・審判を申し立てる方法があります。

①は離婚後に郵送などにより書面で請求する場合で、除斥期間との関係で、「いつ・誰が誰に対し・どのような請求をしたか」を証明するために、内容証明郵便を利用することをお勧めします。

②家庭裁判所の調停・審判手続きを利用する場合、まずは調停手続きで「話し合い」をするという「調停前置主義」が採用されていますから、まずは調停手続きからスタートします。調停とは調停委員を介した話し合いの手続きです。調停で話し合っても合意がまとまらない場合には、裁判官の判断により、「審判手続き」に移行します。審判手続きは、裁判官が双方の主張や提出された資料などを基に判断を下す手続きです。

 

実際の財産分与額はどのくらい?

離婚したご夫婦の実際の財産分与の額は、ご夫婦ごとに様々ですが、婚姻期間が長いほど、夫婦で築いた財産も多くなり、財産分与が高額になる傾向があります。
次のグラフは、裁判所の令和5年度の司法統計から、調停離婚(調停に代わる審判を含む)により離婚が成立した事件の財産分与の金額と婚姻期間の関係を整理したものです。

婚姻期間が20年、25年と長くなるにつれて、財産分与の額が1000万円を超えるケースが増えることがわかります。

財産分与について弁護士に相談した方がよい理由とは?

✔️ 財産分与は、資料作成、金額の計算、交渉や裁判所での手続きが難しい
✔️ 財産分与は、子どもの親権争いと並んで争いが激化・長期化しやすい
✔️ 財産分与は、財産隠しや財産の散逸などリスクがある

✔️ 財産分与は、資料作成、金額の計算、交渉や裁判所での手続きが難しい

特に婚姻期間が長いご夫婦は、形成した財産が高額で多岐に渡るため、財産をリストアップしてその価値を評価するだけでも大変な労力を要します。不動産価値がどのくらいか、株式はどうやって評価したら良いか、裁判所への提出書面の作成自分に有利な主張はどうしたら良いかなど、法律の専門家でないと難しい点がたくさんあります。

✔️ 財産分与は、子どもの親権争いと並んで争いが激化・長期化しやすい

財産分与の問題は、特に婚姻期間が長いご夫婦では高額になり、不動産や株式など評価が分かれるものも増えるため、財産を金銭的に評価した場合の金額の主張が食い違ったり、どちらが何を取得するか、どうやって分けるかなどで争いが激化・長期化しやすい傾向があり、解決までの全てをご自身でやり遂げることは大変なことです。他方で、財産分与の金額が大きい場合には、弁護士費用を財産分与の一部で賄えることも多いので、一度弁護士に相談しておくメリットが大きいといえます。

✔️ 財産分与は、財産隠しや財産の散逸などリスクがある

夫婦の財産がどのくらいあるのかを把握していない、教えてもらえないという方もいらっしゃいます。また、夫婦の一方が財産を隠し持っていたり別居や離婚後生活費に当てられて、財産が減ってしまうということもあります。特に退職金は、一度にまとまった金額が支払われるので、手続きを急がないと使われてなくなってしまうというリスクもあります。弁護士にご相談いただければ、情報の収集や財産の保全など、必要な措置をとることもできますから、早めにご相談ください。

 

財産分与に関する実際の解決事例

私が実際に担当させていただいたケースの中から、財産分与に関する解決事例をいくつかご紹介いたします。

離婚解決事例27 ←クリック

いわゆる「熟年離婚」のケースで1600万円の財産分与を獲得して協議離婚を成立させた事例

離婚解決事例56 ←クリック
不動産取得における妻側の特有財産が認められた事例

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モラハラ夫と訴訟上の和解で離婚が成立し、財産分与と年金分割を得た事例

この記事を担当した弁護士


みなと綜合法律事務所 弁護士 細江智洋

神奈川県弁護士会所属 平成25年1月弁護士登録
当事務所は、離婚問題でお悩み方からのご相談を日々お受けしています。離婚相談にあたっては、あなたのお気持ちに寄り添い、弁護士の視点から、人生の再出発を実現できる最良の方法をアドバイスさせていただきます。まずは、お気軽にご連絡ください。

 

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